#愛など枯れてしまえ。

六月の黄昏どき、
一人サンダルで家を飛び出した。

外への扉を開いた瞬間に
湿気の匂いと肌を伝う水滴が。

まるで私の心を示すように荒れ、
カエルさえも当たりたくないような
残酷な雨が降り続ける空間を、
もっと降れ。と願いを込めて駆け抜ける。

うんと遠くに、誰もいない場所へ
何も考えず、考えられず、ただ走るのみ。

頭の中は何故か冷静で、
この状況を説明する言葉を探している。

一心不乱、無我夢中、猪突猛進

言葉を何度も何度も頭の中で繰り返すが、
これだと言う確信は得られず。

ただこの感情が愛ということだけは確かで
その答えにたどり着いた頃にはもう
愛で頭が満たされていた。

愛を振り払うように、速く速く走った。
必死さに、前が見えず、
目線を下に落とせば、足元には芝生が。

丁度いい、と芝生に寝転がる時には既に
私の体は愛色の雨に蝕まれていた。