…音が聴こえる
「どうしてここにいるんだっけ」
僕はポツリと呟いた
でも、答えは帰ってこない
思い出すこともできそうにない。
この青い得体のしえないものが行き来するのを見ていると不思議と心は落ち着いた
上は真っ青で。
下も真っ青で。
僕は真っ白だ。
どのくらい
ボーッとしていただろう。
いつの間にか上は真っ赤に染まっていた。
僕は真っ白なままなのに。
そうやって深く考えることも無いまま
ふと自宅に帰ろうと思った。
でもどこなのか分からない。
だから後ろにあった、
どこか既視感のある
コテージに入った。
中には誰もいないのに
清潔だった。
つい最近まで誰かが過ごしていたみたいに。
部屋は2部屋だったけど、
僕は迷わず左を選んだ。
右は入ってはいけない気がした。
ベランダにある、
ハンモックに乗った。
部屋にはベッドがあるけれど
もう、何も考えたくなくて
直ぐに瞼を閉じた
どれくらい経っただろう
短いのに長くて、長いのに短い夢
満月の夜、満点の星空の下で僕は目を覚ました
頬を何かが伝う
冷たくて、しょっぱくて。
温かくて、甘かった。
「ねぇ、君は何処へ行ったの…?」
そんな僕の世迷いごとは
満月が吸い込んで、
返事が返ってくることはなかった
【見つけて欲しい】
そんな声が聞こえた気がした。
【ここだよ】
誰かが呟いた気がした。
でも。
もう、分からない。
僕は君を思い出してもいいんだろうか。
夢の中では顔も見えなくて。
声ではなく、筆談で。
手足は隠されていた。
僕に残ったものは何も無かった。