#残り香

君の残り香に想いを重ね


今日もまた独り未練に嘆く

君の残り香が昨夜を思い出させるんだ

さっきまで
君がいたことが
嘘のように
切なくて

華やかな
その残り香を
余韻とともに
そっと心へ
閉じ込める

一気に飲み干した朝のコーヒー。

君が乱雑に開けたドアと靴の音。

希望の灯る夕日が奪った着信音。

まだ暖かい気がするマグカップ。

部屋に漂う君とコーヒーの残り香。

スマホの光と歪な虚空に錯覚した夜。

土砂降りのコインランドリー

柔軟剤の甘い香り

家に持ち帰った洗濯物から

あなたの煙草の残り香…

さっき別れたばかりの

あなたを思い出し

そっと顔を埋めてみる

あなたの残り香を
抱いて眠るの。
あなたを愛しく想う
余韻に浸って＿＿

ふたつ並んだ歯ブラシ
肩を寄せあう
恋の余韻はせつなくて
部屋に残り香がただよう

泣き出しそうな空を見て

さよならの後に漂うぺトリコール

もうここにいない君の

残り香が漂う一人の部屋

僕は泣き出しそうに君が恋しくて

泣きたいよ。

泣きたいけど泣けないの。

なんでって、

貴方がずっと笑っているから

私も負けずに笑わなきゃ。

新しい空気とともに
懐かしさの残り香が漂う。

微かに残る

キミの残り香

去り際に残した

香水の香りと共に

秋の香りを

グッバイ

そう言って飛んで行った君はここにはいないけれど

君の温もりだけはここに残って

残り香を私に跡つけて

いつまでもいつまでも切なくさせるの

ばか

私だって君と飛んで行きたかったよ

気付けば、何故か此処に居る


鼻をくすぐる深い珈琲の香りは

吸い込むと、ホッと安心できた







…それも、ほんの少し前の話







今は、心にじわりと苦みがしみて

苦しくて泣き出しそうになる




《通い慣れた“約束の場所”》は

《苦い思い出の“残り香”》に













『はい、お待ちどおさま』

そしてまた、いつも通りの一杯の珈琲が

乾いた音を立てて目の前に置かれる

……と、そこで気付いた



「マスター。私何も…」

頼んでない

そう言おうとした瞬間、

しわを深く刻んだ顔が

ゆったりと微笑んだ

『それ飲んで、元気出すんだよ』



このマスターは、

きっと全てを悟っている

それでも前と変わらず

こうして暖かく迎えてくれることに

心がじんわりと優しさに包まれる



「ありがとう、マスター」

私の言葉に、マスターは小さく頷いた









あの人との約束の場所

あの人との思い出の場所


まだまだ苦しいけど

いつかはきっと

「出逢えて良かった」と

思えるように……

クッションに残る移り香に
顔をうずめて

夢の続きを追いかける

口では言えぬもどかしさを

見つめ合った額で
噛みしめながら

最期に見た花は君の香りがした