#降り頻る雨の下で

病院のベッドの横には

居眠りをしている彼と

幸せそうな笑顔で映る私


内緒のツーショット。

"まだ、雨は降っていますか？"

静かな病室の窓の外から聞こえる雨音

堪えきれなくなった涙を零して空嘯を呟く

"雨音が響いていますね"

"あなたは、幸せになって下さい"

"私を忘れて下さい"

"誰よりも、笑顔で居て下さい"

病室の入口に"誰か"立っている事なんて
知りもせず、私は涙を流しながら
"雨音が響いている"窓の外を見上げた。

あなたを、愛していました。

"さよなら、愛してる"


あの日、言えなかった

いや、言えなかった

別れを空嘯を呟く


"あぁ、今夜も頬を伝う雨が降る"

どうして、君は、眠ってるの＿？

　
明らかに、以前より、増えたチューブ

不規則な脈を、知らせる心電図

いつも、儚い君が、本当に＿＿＿

＿＿消えちゃいそうなほど

＿＿＿＿＿＿弱々しく見えた。

まだ、消えないで、逝かないでよ。

"私はあなたを愛してしまったから"


苦しくて、呼吸を忘れて、心臓が＿＿

＿＿＿＿どくん、どくんと、＿＿＿。

大きく動くことが、

手を当てなくても分かる程


あなたがいなくなることが何もよりも怖い

ずっと、止まない雨の中で

苦しかった

手首に滲む血

ずっと、ずっと、一人きりで

全部、抱え込んでたんだ

辛かったんだよ

胸の辺りが、ずっと痛かったんだよ。

降り頻る雨の中で、冷たくなってしまった

私の心を、あなたは包むように

私を抱き締めて、優しく微笑み

私の涙を拭うあなたの指先から感じる

真っ直ぐで、暖かい無垢な愛で

冷たく歪んだ愛を優しく、溶かしてくれた

君が眠っている隣で

降り頻る雨を見つめていた

雨音、時計の針が鳴る音。

そして、病室のベッドに小さな吐息。

どうしようもない喪失感に襲われて

思わず、君の手を握る。

その事を、君は知らない。


ただ、残酷にも、無意味に＿＿
静かに、時間が、過ぎていく＿＿＿。

触れた指先から、手の平から

彼女の体温が伝わってくる

いつもの君、いつもの白い病室

二人きり＿＿＿＿。

君は、目を覚まさない。

君の手を握る事しか出来ない僕は無力だ。

まだ、君を探しているんだ

『好きだよ』って言わせてよ


また、泣きそうだ

"ごめん"


君の傍には、まだ逢いに逝けないんだ