「先輩ちゃんと
寝てました?」
病室に来るなり
ベッド脇の椅子に
腰をかけながら
そう聞く君。
「いつもよりは
休んだと思う」
って私
ピースサイン作って
どや顔で言ってやる
「おーえらい
じゃないっすか」
って
「熱は」
って重ねて尋ねる君に
「37度5分」
って私が答えると
「微熱ー。よかったっす」
ってあからさまにホッとして
かわいい笑顔を作る君が
「いい子だった先輩には
プレゼントをあげましょう」
って
カバンをあけて
手のひら大の小箱を
見せてくれた。
「え、何」
っていったら
「サプラーイズ」
って君
あけるよと、笑う。
君が見せてくれた箱の中には
ドーム型のガラスケースに入った
赤いバラのブリザードフラワー
台座には
「2017/11/22
kazu&tama ENDLESS LOVE」
って彫ってあった。
「かわいい」
って私
思わず笑顔になって
君を見つめると
君が私に寄り添うように
くっついてきて
「花も字も手製なんすよ
すごいっしょ?ほめてください」
って私に笑顔をむける。
「これ作ったの?」
って聞くとうんってうなずく。
もう一度
よくよく見ると
花びらは
割れているところがあったり
色あせているような
ところがあったり
文字はところどころが
太かったり細かったり
君の手作り感が満載だった
「時間もかかったよね
大変だったでしょ」
って聞くと
「喜ぶ顔が見たくて」
って私の顔をじっと見る。
恥ずかしくなって
顔をそらしたら
「そうそうその顔たまんない」
って変態なこと言うんだから。
「それからこれ」
って君。
またまたバックから
画用紙を取り出した。
こどもたちからの
いい夫婦の日の
プレゼントだという。
そこには
君と私の絵が書かれてあって
画用紙の上の方には虹。
下には大きなあの子と
小さなあの子がいて
「いい夫婦だね」
って、
大きなあの子の字で
書いてあった
苦しくて寂しくて
痛くて、もうほとほと嫌で
正直体が少しでも動くなら
窓から身を投げてやろうか
そう思うくらいしんどくて
でも君が一生懸命
作ってくれたプレゼントと
あの子たちの絵を見たら
ただ、帰りたいって。
少しでもよくなって
帰りたいって。
そう思えたら
抱えていた不安とか
苦しさとか
こどもたちの側に
いられない悔しさとか
全部弾け飛んだように
涙が止めどなく
溢れて止まらなかった
「泣くとまた苦しくなります
落ち着いて、深呼吸」
って優しい君の声。
ベッドのへりに腰を下ろした君に
身をあずけるようにして
ずっとしばらくそうしてた
君の温もり
君の側にいるっていう実感
君のことが
好きだってこの気持ち
こどもたちが大切だって想い
全部全部が
宝物みたいに思えて
死んだ方が楽だって
想いがほんのちょっとだけ
軽くなって
生きてく希望が見えた気がした。
涙が落ち着いてから私
「ごめんね
私何も用意出来なかった」
って言ったら
「もう充分」
って君、私の頭を優しく撫でて
「もらいましたから」
って言う。
「何をもらったっていうのさ」
って私が言うと
「内緒」
っていたずらっ子みたいに
君は笑った。
君が何をもらったっていうのか
わからないけど
入籍して一年目のいい夫婦の日
やっぱり私も何かあげたいな
手作りをもらったから
手作りで返したい
この手で
何が出来るだろう
そんなこと考えながら
今日は、眠りにつこう
そうしたら絶え間ない痛みも
幸せにかわるかな?
今日はありがとう
君たちはやっぱり
私のかけがえのない家族です
そして君は私の
最良で最愛の夫です。