同じ夕焼けを・2025-06-19
ファストフードな恋心
バス停にいる
高校生のカップル
男の子のネクタイが
曲がっている
それに気づいた女の子
だらしないと言いながら
楽しそうに直してあげる
男の子はワザと
迷惑そうな表情をする
だけど口角だけは
キチンと上がっていた
コーヒーが苦手な男の子
高校生だからと
背伸びして
ブラックコーヒーに挑む
フタを開けて
その香りに怯む
でも負けずに
ひと口飲んでみたら
苦みに耐えかねて
涙目になる
女の子は心配して
持っていたチョコレートを
彼に食べさせたら
ふたりは顔を赤くした
今日は2月じゃないけど
14日だったね
華奢な男の子は
力コブをつくっては
たくましい体になりたいと
こころの声を漏らす
女の子は何か力になりたいと
毎日男の子のために
いつかポパイになってねと
ほうれん草料理を
食べさせてあげる
男の子は力コブをつくっては
いつかきっと
ほうれん草料理の
成果がでるから楽しみだよ
女の子に感謝の言葉を
告げていた
だけど男の子の本心は
女の子の手作りハンバーグを
食べさせて欲しいんだよね
ホタル狩りにきている二人
小さくても美しい光が
ふたりの前を飛び交うたび
歓声をあげている
ホタルの数は
どんどん増えて
たくさんのホタルが
ふたりの周りを
楽しそうに飛んでいる
きっとホタルたちは
ふたりが放つ恋の炎に
引き寄せられているんだね
朝からずつと
降っていた五月雨は
下校時間を合図に
あがりました
だけど男の子は
相合い傘ができなくて
とても淋しそう
女の子は男の子を
元気づけようと
傘を使って
バトントワリングの
マネごとをしました
たちまち男の子は
元気になって
彼女のダンスを
マネし始める
そんな二人を
虹が羨ましそうに
七つの光で
照らしています
通学路を並んで歩くふたり
男の子は今日こそ
手をつなぎたくて
左手がモジモジしてる
女の子は早く手を
出して欲しくて
男の子の顔を
横目でチラチラと
のぞいている
そんなふたりに
しびれを切らせた
青い夏空が
強烈な霹靂を
プレゼントしたら
ふたりは驚いて
抱きついていた
帰ってきた梅雨空は
相合い傘の花を
一斉に咲かせた
みんなこの日を
心待ちにしていたみたい
肩を寄せ合うカップル
傘を持つ彼の腕に
そっと手を添える彼女
二人で傘の柄を
愉しげに握るアベック
昨日は青い花を
咲かせていた紫陽花が
赤く染まっていた
男の子のネクタイを
結びなおした女の子
ネクタイを見つめ
やっばりまだ
曲がっていると
もう一度結びなおす
本当はもう
綺麗に結べているのに
もっと男の子に
近づいていたいのかな
彼女から英語を教わる彼
何度きいても
分からないみたい
彼女は何とか
分かって欲しいと
躍起になる
とうとう彼は
頭をかかえて
降参しようとする
そんな彼の頭を
彼女は優しく撫でる
分からなくても
幸せにはなれるんだね
夜の海の遠くの沖で
船の汽笛が
ここにいるよと
灯台に呼びかけている
お船は灯台に
守ってもらっているのに
お礼を言っても
何の反応もなくて
淋しそうだねと
キミがつぶやいて
指で目を拭っている
キミにはそんな想い
絶対させないからと
男の子はそっと
女の子の肩を抱く
女の子は真顔で振り向き
そんなキザな台詞は
破れた靴を買い替えてから
言いなさいよと
叱りつける
まずは自分の足元を
照らすことから
始めようね
広い背中が
彼女のコンプレックス
だから彼女の
後にいると
怖い顔される
みんな彼女を避けるのに
小柄な彼は
彼女の背中がお気に入り
毎日あいさつ代わりに
その背中に抱きついている
戸惑いながらも
彼女はとても嬉しそう
だけどまだ彼のことは
弟のようにしか
見えていないね
晴れの日が続いて
相合い傘してる
カップルの姿を
見かけることのない
淋しい梅雨の晴天
日傘で相合い傘してる
高校生のカップルが
歩いていた
幸せのお相伴を
あずかろうと
眺めていたけど
眩しすぎるね
オームの法則を
気になる男の子から
教えてもらう女の子
男の子は数式を書き書き
回路図を描き描き
丁寧に説明してる
でも女の子は不満そう
そろそろ気づいてあげて
女の子が欲しいのは
恋愛は勝つという
不動の法則という答えを
草の虫の声が
お気に入りの女の子
男の子を連れて
宵の公園に赴く
女の子は目を閉じて
スズムシマツムシ
クツワムシ
鳴く虫の声を言いあてる
ふと頬に手が触れたのを
感じ取った女の子
顔を赤くして
男の子の名前を
口ごもっていたけど
虫たちの声で
男の子には
聞こえていないね
ひとつのアイスクリームを
ひとつのスプーンで
代わりばんで
食べているカップル
どちらも相手に
たくさん食べて欲しいから
アイスクリームは
ちょっとずつしか
減っていかない
このままだと
アイスクリームが
溶けてしまうよと
眺めていたら
もう二人のこころは
とろけているみたい