同じ夕焼けを・2025-08-19
ファストフードな恋心
夏バテで痩た男の子
久しぶりに女の子と出会った
女の子は男の子の
体の具合を心配する
男の子は何ともないよと
気丈に振る舞う
やっぱり女の子は
男の子が心配で
食が細くなって
栄養が不足しているの
男の子に問いかけた
男の子はしばし考え
不足しているモノに気づいて
女の子に言った
キミが不足していたよ
ミンミンゼミの鳴き声が
甲高く響く
同じセミなのに
夏の始まりに鳴くセミは
とても賑やかなのに
どおしてミンミンゼミは
淋しげに聞こえるのかな
女の子の呟きに
男の子は静かに答えた
猛暑も酷暑も
乗り越えたら
淋しく感じるんだ
人生も同じさ
こんなにも美しくて
かぐわしい花なのに
毒を持っているなんて
かわいそうだね
女の子は淋しそうに言った
男の子は空を見上げ呟く
美しい花を守るためには
毒を持たなくては
ならなかったんだね
摘み取ろうとした
バカな男に
キョウチクトウの
花が沁みるよ
ある日女の子が
暮れなずむ海を見つめて
言っていた
いつかハワイに行きたいな
それを思い出した男の子
庭に咲くノウゼンカズラの
花を摘み取って
レイを作った
次の日それを
女の子の首に掛けてあげたら
ハワイの夕焼け空みたいで
キレイだねと
感激してフラダンスを舞う
その姿に見惚れた男の子
ノウゼンカズラに
負けないくらい
顔が紅くなっているよ
線香花火をする男の子
火花が散り終え
いよいよ終わりが近づく
息を潜めて
火の玉を見つめる
その時女の子が
男の子の肩を指でつついた
火の玉はあっけなく
地面に落下した
男の子は何をするの
女の子を責める
女の子は淋しげに言った
線香花火が人生を
表現しているなら
アナタの人生は
まだ終わらせないよ
7ー3
こんなことなら
七夕の日に
夏休みの宿題が
出ませんようにと
短冊に書いて
おくんだったよ
キミは悔しそうに
文句を言っているけど
そんな願いをかけられても
織り姫様も彦星様も
困るだけです
一番大きな花火が
打ち上げられた
一筋の光が尾を引いて
空へゆったりと昇ったら
一拍間をおいて
光の大輪が
夜空をひとり占めした
その瞬間みんなは一斉に
歓声をあげて
喝采していた
女の子も団扇を
左手でパタパタたたいて
喜びを表していた
男の子はやっぱり
はしゃぐ女の子を
愛おしく見つめていた
夏を賛美する歌を
次から次へと
口笛で吹く男の子
両手を広げて
大空を仰いで
やっぱり夏は素晴らしいと
叫んでいる
女の子は男の子の
肩にポンと手を置いて
しみじみと言った
いくら夏を愛でても
宿題は終わらないから
ふと日の入りが
早くなったことに
気がついた女の子
暑さから解放されるけど
やっぱりこの淋しさは
胸に詰まるよね
もうすぐ堕ちる
夕日を見つめて言った
そんな女の子を
元気づけたい男の子は
まだ夏は終わらせないと
夕日に向かって叫んだら
女の子の手をひいて
坂の上目がけて
走り出した
ハイビスカスの鉢植えが
豪華な花を咲かせている
故郷沖縄から
遠く北に離れたこの地も
負けないほどに
暑い日が続き
唐紅の花が良く映える
でもやっぱり
ハイビスカスは
沖縄の空が恋しいんだよ
女の子は呟く
男の子は一計を案じ
家に何かを取りに行き
それを鉢の隣に並べた
これで沖縄の雰囲気が
出てきたね
そう言って
パインの缶詰の空き缶を
得意げに眺めた
女の子は呆れ顔で
男の子の顔を眺めていた
キョウチクトウが
燃えるような紅い花を
咲かせている
男の子が摘もうとしたら
女の子は慌てて
男の子の腕を握って止めた
せっかく咲いているのに
摘んでしまっては
かわいそうだねと
男の子は反省している
女の子は首を横に振り
心配そうに言った
キョウチクトウには
毒があるから
触らないで欲しかったの
鉢に浮かぶホテイソウ
若紫の涼しげな花で
和ませてくれる
ワタシも優雅に水に浮かんで
美しい花を咲かせるような
人生を送りたいな
女の子がウットリと言った
男の子はホテイソウと
女の子を見くらべて
きっと叶うよと
自信ありげに言った
女の子は両手を組んで
男の子を輝く瞳で
見つめている
男の子はホテイソウを
指さして言った
この浮き袋は
キミのポッチャリ体型に
そっくりだから
丘に植えられた
コキアの列
時折吹く夏風に
涼しげに揺れている
その愛らしい姿を
ふくよかな体型の
女の子と重ねた男の子
キミみたいにかわいいね
コキアを撫でながら言った
それを聞いた女の子は
顔を赤らめる
男の子はその顔を見て
コキアが紅葉したよと
はしゃいでいた
7ー1
今日で一週間です
ようやく希望が
見えてきました
やっぱり計画を
しっかりと守ることが
大切だなと
思ったけれど
キミはやっぱり
分かっていません
何でこうなるんだよ
夏休み前に立てた計画表を
笹の葉に吊していたのに
こんなに宿題が
残っているなんて
何かがおかしいんだよ
雪より白いサギ草が
夏の果てに花を咲かせた
その印象的な花を見つめ
サギ草は大空を舞う
雪客の美しい姿に憧れて
その形をマネたのね
女の子の言葉に
男の子は腕組みをして
サギ草を見つめて呟いた
もしかしたら
空を飛べる鳥を
羨ましく見上げる人々に
地上にも健気に咲く
花があることを
伝えたくて
鳥の形を模したのかもね