『まま、。』NO.5
その日はよく晴れた日だった
いつも通りの日々が続くって
普通があるもんだって
勝手に思ってた
「ねぇ杏ちゃん。」
急に白くんが話しかけて来た
白くんの口から出た事実に
私は混乱が止まらなかった
「僕は、産まれて一週間で
直ぐに死んでしまう
病気を持って産まれるんだ。
ママが今朝、夢に出てきて
泣いてたんだ、僕のせいで。」
”出産前診断”と言う
出産前に胎児に病があるか調べる
検査があると言う
それで、白くんは_
「ねぇ杏ちゃん。幸せになりなよ。」
優しい言葉なのに
心がズタズタになった
白くんと一緒に
下の世界で笑い合いたいと
願ってしまったから
「ねぇ、ねぇ白くん…。
白くんと下の世界で会いたいよ。
会ってね、またシロツメクサの
かんむり作ってよ…。白くん。」
ギューッと
聞こえる程強く
私は白くんを抱き締めた
でも、抱き締め返って来る事は無く
「僕、明日
滑り台滑るから。ママ、見つけたから。
今日で最後だね、杏ちゃん。」
と、言い残して消えて行った
いつの、間に
いつの間に白くんは
ママを見つけたんだろ
私が寝てた間かな
寝なきゃ良かったかな
どうしたら、一緒に居てくれるのかな
もう居なくなった
私の隣を
私はいつまでも見つめていた
ご飯なんて、喉を通らなくて
新入りさんにすら心配された
白くん
その名を呼ぶだけで
心が痛むよ
ポトリ、ポトリ
白くんの顔に涙が落ちてしまった
「…杏ちゃん。」
茶色に光る優しい瞳と
目が合って
思わず涙が出た
「…大好き。」
困るって分かってたのに
私は言ってしまった
「…大嫌い。」
そう返ってきた時は
泣きそうになったけど
「大好き…!」
私はめげずに言い返した
「…大嫌い。」
「大好き!」
「大嫌いだ。」
「大好きだ!」
「…大嫌いなの!」
「…大好きなの!」
その内白くんは
泣き崩れた
「…僕を…壊さないで。」と
それでも私は言い返した
途中で白くんは諦めて
震える手で私を抱き締めながら
「…大好き。」と言ってくれた
そして
”今日は滑らない”とも言ってくれた
「杏ちゃん。大好き!」
「へへへ、私も!」
あの日から、数日後
「杏ちゃんっ、大好き!」
「んもー!多すぎるー!」
白くんは
朝100回
昼100回
夜100回
私に大好きと言うようになった
そんな白くんが
たまらなく愛おしいと思ったのは
秘密にしておこう
「あのー、ご飯、
持ってきました。」
新入りのお兄さんが来た
私は、思い出して
お兄さんの元に走って行った
「お兄さん!昨日はありがとう!
凄くね、凄く救われたよ!」
お兄さんは昨日
白くんの事で落ち込んで
自分でおにぎりを取りに行く
気力も湧かなかった私に
おにぎりを渡してくれた
あの時は白くんの事で
いっぱいいっぱいだったけど
お兄さんにはかなり救われた
お兄さんは少し思い出したような
顔をして
やっぱり暗い顔になった
でも私はお兄さんと仲良くなりたいから
「お名前!なんて言うのー?」
暗いお兄さんに話し掛けた
「…悟。」
消え入りそうな声だった
でも、はっきりと聞こえた
「悟お兄さん!よろしくね!」
悟お兄さんは少し驚いてから
「よろしく。君は…杏ちゃん、だっけ。」
と、返してくれた
「うん!お名前呼んでくれたー!
ありがとー!嬉しい!」
初めて悟お兄さんと
まともな会話が出来て
喜んでいると
お兄さんは一瞬、微笑んだ
綺麗な顔だった
「じゃあ、また来るよ。」
悟お兄さんに手を振って
私はお昼寝をした
ーContinuedー