#匿名希望な感情

ふわり

空を舞う

ひらり

風に乗る

はらり

頬を伝う


あ、今も

花弁が

宙を舞う


風に煽られ

何処か遠くへ


ふわり

私も

ひらり

心が

はらり

落ちる


風に吹かれるだけで

ふわり

眩ませられたら

ひらり

ここを伝う液体も

はらり

知らずに済んだかな


嗚呼

何かに煽られ

ぱさり

何かがオちた


私は何も知らない

何も知らない



『猪目に花散らし』

光尽きそうな星の屑

君が消えるまでに

僕も輝いてみるって約束

果たせそうにないや

静まり返る夜、呟いても

この距離じゃ届かないね






『消えんとすること勿』

甘酸っぱい青春味の奥に

苦味成分が隠れている、と

学生服時代から抜け出すと

苦味に覆われた

3年間というラベルを剥がして

材料の内訳を変えてしまう


いいや、違う

そんなに自分勝手な

記憶改ざんじゃない


実際は何かを足したわけではなく

大学生になり

私の味覚が変わっただけなんだ


苦くて不味かった

ブラックコーヒーも

いつの間にか

頼むようになる具合にね


この変化に気付けるのは

分岐点から先に進んだ入学式よりも

もう少し先、らしい



『まだ苦いだけのブラックコーヒー』

想像する。


僕は、想像をする

特定の何かを捉えることなく

頭の中で、記憶を探る

探す。


何も捉えていない想像上の視界は

白くぼやけている


雪がチラチラと舞うのを

敢えて、ピントを合わせず

あるがままを映す様だ


掃除もされず誰も触れず

世界から切り離されていた

誰かの大切な部屋に踏み入り

その白いカーテンをめくる

埃が舞う

光が舞う

湿った香りとくすむ色の様


ゆったりと動く心臓

息に合わせて張る左側の肺

髪の重みさえ、感じる


時の流れに逆らうように

僕は記憶へ飛び込む


あった。


転がる何かを掴んだ僕は

途端に視界が鮮明になる感覚に

興奮を覚える


心臓が力む

肺が気配を消す

髪が軽くなる


聞こえていた秒針の音

見えていた白い世界

静かに置いていた、この手


どうでもよかったあの日の欠片を

特別なもののように包む僕は

白くくすんだ想像手前の世界を、忘れる。



『一歩手前の蜃気楼』

ウラもオモテもサブも

器用に使い分けるネット人生


家を固定することなく

自由気ままに過ごしたいのか

それとも

固定的人格を決めつけたくないのか


人格の使い分け

垢変で全てを切れる人間関係


まるで責任から免れるように

匿名の匿名の匿名で放たれる

自由を得た文字


人間が裏にいると

匂わせることで

人が集まるそうな


ならば

作り出した新たな自由空間で

発言をすること自体が

せっかく作った

その人らしさから逃げられる自由を

放棄する行為になるのではないか


意図せず固定されていく

匿名の匿名の匿名の人格


新たに出会った人々とて

数ヶ月すれば

求めた新鮮味が鈍ってくる


生き始めたアカウントの命

それを切り捨てて

彼らは、再度旅に出る


終わることのない旅に

出ている実感も持たず



『固有名詞を手放したい旅人』

君の気配が

月を追うごとに薄れる


僕はただ

新しかったはずの筆跡が

いつか必ず古くなる空間が怖かった


確かに君はいたという証拠が

時間に消されるような感覚が

憎くてたまらなかった


まだいて欲しかった

なくならないで欲しかった

僕が遺すはずだった


抗えない時の流れに

削れて粉々になる紙にも記憶にも

僕は勝てなかった


生きる限り

負け続けるのだと悟った



『永久置き手紙』

仲良かった人を

誰かに取られそうになって

嫉妬という怒りが

頭を支配する前に

期間では勝るのに

それでも勝てない程

私に魅力なんてないわなって

再度傷付く前に

諦め一色に





『略奪敗者』

誰にも顔を合わせない夜は

心に纏わせた彩りが

ほろりほろりと落ちてしまう

すっぴんな本音と向き合わざるを得ない

静かなこの時間は

気を張らなくていいのに、苦手だ




『落つる心化粧』

ここに閉じ込めたホントの

ここに生まれたホンライの

ここで息するシラナイ


自由に言葉を並べて

外より気軽な雰囲気で


そんなワタシも

此処の私も

全て、本当のわたし




『0と1の狭間で揺れる思考』