わたしには 名前はない
ノラだから
生まれてから わたしは
妹と ハコに入れられ
人間に 捨てられた
妹は 人間の子供が連れていってしまった
わたしは ひとりで生きてきた
いや ひとりではなかった
生きてくすべを 先輩ネコの
ミケ姉さんに 教わった
「いいかい カラスには気をつけな
あんたみたいに 小さいと
カラスは 襲ってくるからね
わたしのそばを 離れるんじゃないよ?」
「うん!わかった カラスって怖いのね?
ミケ姉さんから 離れないよ」
「おなかが空いたら この家に来るんだよ
ここの人間は ご飯をくれるんだ
悪い人間ばかりじゃない
わたしの名は 人間がつけたのさ
ここん家の人間が わたしをミケと呼んだんだ」
わたしの 妹は 元気にしてるかな?
きっと あの子供に 名前をつけてもらったよね
ある日 妹を連れていった子供を見つけ
わたしは 追いかけた
わたしは 夢中で走っていて
気をつけていたのに 車が後ろに走っていたのに
気づかなかった
「危ない!」
ミケ姉さんの声がしたと思ったら
ミケ姉さんが わたしを つきとばした
「ミケ姉さん?!大丈夫?!」
ミケ姉さんは 横になったままで
わたしが声をかけても 返事がなかった
車から 人間が降りてきた
「うわ どうしよ… ネコを轢いちゃったよ
大丈夫かな あ! まだ生きてる!」
「えぇ ほんとに?じゃ 病院に連れていこうよ」
2人の人間が 何か話しているけど
何 話してるんだろ?
「よし!じゃ病院に行こう!
ごめんな?助けてやるからな?」
待ってよ!ミケ姉さんをどこに連れてくの?
人間は ミケ姉さんを車に乗せて
どこかへ 行ってしまった
妹だけじゃなく
わたしの大切な ミケ姉さんまで
人間は 連れていってしまった…
人間なんて 大嫌い!
それでも おなかは空くし
わたしは ミケ姉さんに教えてもらった家で
ご飯を もらいに 行っていた
ミケ姉さんと 会えなくなって
どれくらい たっただろう?
外で 日向ぼっこをしていると
1人の男の人間が 近づいてきた
「お前 前に飼ってた サスケによく似てるなぁ
なぁ お前 ノラ猫だろ?
僕んちに 来ないか?」
その人間は とても 優しい顔をして
わたしに 話しかけてきた
何を言ってるのかは よく分からないけど
わたしは 不思議と その人間から
離れることができなかった
「 よし!決まり!家においで?」
いきなり その人間は わたしを抱きかかえた
ちょっと!いきなり 何すんのよ!
その人間は 笑顔で わたしの頭をなでた
その手は とても 温かくて 気持ちよかった
逃げようと 思ったけど
ミケ姉さんの言葉を思いだした
「いいかい 人間は 悪い人間ばかりじゃない
わたしら ネコに 優しくしてくれる人間もいる
いつか お前も 優しい人間に会って
人間の家で 暮らせるかもしれないよ?
お前の妹のようにね」
この人間が そうなんだろうか?
「着いた!ここが 僕の家だよ
僕は 1人で暮らしてるんだ」
人間が 家の扉を開けた
ここが 人間の家?広い!
「僕の名前は 佑樹って 言うんだ
これから よろしくな?
お前に名前を つけないとな」
この人間の声は優しくて
なぜだろう とても落ち着くな
「よし! お前は 女の子だから
コハルにしよう
今日は 小春日和だから!
可愛い名前だろう?」
こうして わたしは この人間の家で
暮らすことに なってしまった
何度か 呼ばれてるうちに
わたしは コハルと 名前をつけられたことが
分かった
入ることはないと思ってた 扉の向こう
ゆうきの家が わたしの居場所
ミケ姉さんの言ってたことが
ほんとになったんだ
ミケ姉さんに また会えたなら
言いたいことがある
ミケ姉さん
わたし コハルって 名前つけてもらったよ
今 わたしは 幸せだよ
ミケ姉さんのおかげだよ
どうも ありがとう