「君は今、何処に居ますか」
君からの返事はなかった。
俺が送った言葉は、
遠くに消えてしまった。
届いていなかったのかな。
俺はもう一度聞いてみた。
「深海」
その2文字だけが帰ってきた。
最初は分からなかった。
深海の何処にいるのか。
きっと君は、深海の底にいたんだ。
深い波に呑まれ、もう2度と
俺の顔を見れることはなかった。
俺は嫌われることを覚悟して
手を伸ばした。
「おいで」
そう言ってみたけど、
君は泣くばかりだった。
俺は君の顔を見た。
すごく不安そうだった。
そりゃそうだよな。
辛いことがあって、沈んでいって、
今俺の手を取って上っていったとして
誰も喜んではくれないかもしれない。
暗い海に落としてしまった
綺麗なガラスが戻って来たとして、
共に磨くことは無いかもしれない。
だから不安なんだろ。
違うとしても、怖いだろ。
でも俺は、怖いもの知らずだった。
君が怖いことも、俺は平気だった。
だからといって無理矢理
同行させるわけではない。
ただ、ゆっくり教えるんだ。
この世界のいいところ。
海の底より綺麗なところ。
俺の君への気持ち。
他にももっとある。
海から出て、誰もいない浜辺で
話をしよう。ね?
潮風をあびながら、2人で。
「なんでそこまでするの?」
もう一度君の笑顔が見たい。
ただそれだけ。
単純な男でごめんね。
君は謝らなくていい。
・・・・・
だって落とされたんだ。
俺は被害者を放っておけない。
余計なお世話かもしれない。
それでもいい。
だから
笑って。
Byののろ