月が主張し始めた残照
右左と歩く人の姿が
すべてシルエットになる
無機質に群れを眺める
知らないわたしに虚を衝かれ
心さまよう ぬるい風
蝶番・2024-09-11 #sketch*
夜気の垂れ込める湖畔を
切り裂く打ち上げ花火
誕生とほぼ同時に消滅する
閃光と轟音を幾度も浴び
幕間、朧に佇む自分の
同じようなシルエットの人の
推し量りかねる心模様
蝶番・2024-07-30 #sketch*
遠くの屋根をさざなむ
まばゆい金色の波
ちらちらと囀ずる葉の揺らぎ
風の行方をわたしはじっと見ている
蝶番・2025-02-21 #sketch* #diary*
春の薔薇はしっとりと濡れ
瑞々しい期待にふるえていた
今、乾いた風を気にも留めず
銘銘がすっと立つ
一片の寂しさを横目に余りある自由
蝶番・2024-10-22 #sketch*
唐黍に似た背高な草々
生えるがままの隙間をトンボが舞う
夏の朝の終わり
雑草が繁茂する資材置場脇に
一輪の露草を見つけた
少し季節外れかと
青地に真ん中の黄を
何度も確認する
くっきりしすぎるから幻めく
見れば見るほど
ほどかれてゆく存在の錘
蝶番・2025-09-19 #scenery* #sketch*
風を避けると歩くのは朝になる
ようやく散歩する時間が取れ
足を延ばした先には
数年前に切り倒されたカブトムシの森
真っ平らになっていた場所に林立する枯れ木で
新たな林が作られていたと知った
つくしを探しながら歩を進める
なずな、ホトケノザ、オオイヌノフグリ…
蕾を開こうとしているタンポポひとつ
お目当ての垂直はまだのようだ
遠くから人声
遅れて打球の音が響く
頬に当たる感触で
風速も測れるようになった
限界値であることを確認し踵を返す
車も増え始めた
ピピートゥトゥトゥ
行きに聞こえた
特徴的な鳥の鳴き声はもうない
朝と午前の境目は七時半というところか
水仙、クリスマスローズ…と
家々の植栽を冷やかしながら
帰途につくマスク越しの鼻先に
くっきりと甘い香りが絡む
思わず振り返ると
沈丁花が裏庭にひっそりと佇んでいた
白い花房を前に足が止まる
香りが姿より先に現れるのは
沈丁花にくちなし、金木犀…
どれも季節を知らせる花だ
鋭角的な香りに愁いを含む
そのイメージは、先日足跡を消した
美しい人を思い浮かばせた
はっきりと漂う甘い香りが
手では決してつかめぬように
春の別れはいつもより物悲しく
うずうずと胸を絞る
不意に初夏めいた風に背を押され
離れる瞬間わたしは目を閉じた
光、声、ぬくもり、香り…
たくさんの星が彼女の上に降りしきらんことを
蝶番・2025-03-23 #sketch* #diary* #scenery*
中空の光、耀う
潔く風は吹き抜けて
春は、もうそこに立っている
蝶番・2025-01-09 #空を見上げて #sketch* #diary*
黄アゲハが何度も頭上に円を描く
くるくる、くるくる
どこかで羽化できたのだと
小さく手を上げてみる
まだ新しい光 手元には虹
シオカラトンボがすいっと横切り
薄青の空に遠く飛行機雲を見つけた
蝶番・2025-08-15 #sketch* #diary*
いろんな光沢 いろんな手触りの
絵、写真、文字きらめく
そして、題字が直接
わたしの歩幅に合わせ
そこかしこで鳴り響く
目に入らないものも含み笑いし
子どもみたいな期待にぐつぐつとしている
黄白色の宝石箱
外はあたたかな小糠雨
多幸感に抱擁されて
蝶番・2024-11-15 #本屋 #sketch*
白 橙 青 黄
それぞれの明かりを灯す窓たちは
まるでひとつの絵のような親密さで
夜の入口にすらり立っている
蝶番・2025-09-18 #sketch*
雲が掴めそうに並ぶ
無音の頂きに立つ
程なく成層圏からの風が吹き
過ぎた時間が背ではたりと鳴った
蝶番・2025-09-26 #sketch* #scenery* #recollection
見上げれば銀を光らせる機体が
器用に左右へとすれ違っていく
秋は夕に顕著で
雲は白鳥の羽ばたきの形
どれだけ熱を加えても残り香に過ぎない
空は高く
すべてのものには終わりがある
風が強く吹いてる
蝶番・2025-09-02 #sketch*
葉がはためく
枝がたわむ
風が渦を巻く
恐れに片頬を冷やしながら
交互にたゆみなく出す足
荒ぶる森に半ば身をまかし
生命の息吹きを感じる喜び
そして外へ踏み出したからわかる
ぬるま湯の温かさ
あなたがたの帰り着く家は
優しさで満たしていたい
せめて膝下くらいのほのあたたかさで
蝶番・2025-01-17 #sketch* #discovery